沖縄タイムス週刊 「ほ〜むぷらざ」連載 人・旅・エッセー
『うきうきバンコクオフ』 前編

  オフという言葉がある。普通は仕事のない休みの日をオフというけれど、私達ネットワーク仲間が口にするときは、パソコンを通 し相手とオンラインで繋げている状態ではなく、パソコンの電源を切り、飲み会や遊びなどで直接本人と会っていることをそう呼んでいる。(仕事で会うのはオフとはいわない。)それを外国でやっちゃうのが海外オフ。東京で暮らしていたとき私がハマっていた趣味のひとつだ。
 旅好きな仲間とオンラインで外国の話をしているうちに盛り上がって、いつのまにか日程の調整が始まり、今度のオフの集合場所はタイ王国の首都バンコクになった。一泊だけで帰っちゃう超多忙な人、せっかく行くなら長く!とすでに滞在費の心配をはじめる人(=私)、行くつもりはなかったのにつられてしまった人(=富山に住む私の友人)、ちょうどその頃バンコク出張だから、オフに日程を合わせてしまおう!とたくらむ人など、あっという間に面 子は揃った。

 日本各地からそれぞれ現地入りし、予算に合わせて好きなホテルに滞在。季節は生憎の雨期だ。「バンコクの雨期をなめたらいけないよ、土砂降りじゃなくて水の中にいるみたいになるんだから。傘なんて役に立たないし、あっという間に膝ぐらいの深さになるからね!」と思いっきり脅かされてきたので、覚悟はできている。ところがなんと、私達が滞在した一週間、ずっと晴天!今回の参加者は晴れ女&男揃いらしい。街路樹のモクセンナが満開の下をそぞろ歩けば、大好きな那覇の街と同じ匂いがする。いっぺんでこの街が気に入ってしまった。いたる所で美しい花輪を作っては売る女性や子供達を見かける。ジャスミンのつぼみやバラの花に糸を通 したプワン・マライ(花数珠)だ。香りと色が素晴らしく、デザインが作り手によって微妙に違って美しい。お供えとして仏像にかけたり魔よけのお守りとして車にぶら下げたりするものだけど、早速買い求めてバッグに飾る。

 バンコクと言えばオリエンタルホテル。チャオプラヤ川を臨む最高のロケーションに建つ、宿泊料を調べる気にもならない位 の超高級ホテルだ。食事はともかく、お茶くらいなら...と、勇んで出かけたら、ロビーに短パン姿の欧米人がうろうろするいわゆる観光地のホテル風だったのにはちょっとガッカリ。でも大好きな森瑤子さんの小説に出てくる川にせり出したテラスで、暮れなずむ街を眺めながら食前酒を一杯・・・ああ、シアワセ。。そのカクテル代が、泊まっているホテルの一泊代金に限りなく近いことを知った時、酔いはすっかり醒めてしまった。

 夕食はやっぱりタイ料理。東京でイヤというほど食べまくり、作りまくっていたタイ料理が正しいのかどうか、確認と称してあれこれ頼み、本場の辛さを初体験。タイにはプリッキーヌという唐辛子がある。小指の先ほどのサイズだが、辛さは世界一。青いうちに収穫し、思い切り叩きつぶしてから料理に入れる。これがまた辛いのなんのって。辛いを超えて痛いのだ。何も知らない友人は、思いっきりこれを噛んでしまい、しばらく口が利けなかった。おまけに下を向いてポロポロ泣いている。その他にも青いうちに収穫したコショウの実も房ごとたっぷりと使われているから、もう大変。水代わりのビールがすすむこと!しかも十五分位 たつと、痛辛さはウソのように収まり、料理についまた手が伸びる。なぜだかわからないが、これがタイ料理の魅力(魔力?)かも。滝のように汗をかけば、自然に涼しくなる。バンコクの年間平均気温は約三十度。つまり一年中真夏なのだ。たまには大汗をかかないとやってらんない。なるほどそういう訳か!などと言い合っては食べ、食べては苦しみ、ビールをあおり汗を流し、また食べる、を繰り返しつつバンコクの暑い夜は更けてゆくのであった。(後編に続く)

以上文責 飯塚 未登利 2002 注意!無断転用転載厳禁!
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